今年の5月から8月まで、理事の山本と永野間が参加したNPO法人ETIC.主催のシステムリーダーシップ研修の最終日に、4ヶ月間ともに学び、議論してきた他のNPOや企業・団体の方々にも、今回の出会いをきっかけに産後ケアを知っていただければ…と『産後白書4』をお渡ししました。(「産後白書4」全7章無料公開はこちら)
すると直後、産後白書4を読まれた 特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール (以下、放課後NPOアフタースクール・放課後NPO)の栗林さん(まゆみん)から、「さっそく団体の人事担当者に白書を紹介したところ、産休・育休取得者に『産後白書4』をぜひ送りたい!というのですが、少し分けていただくことは可能でしょうか…?」とうれしいお申し出をいただき、喜んで!と『産後白書4』をお送りしました。ちなみに栗林さんは、11年前にマドレボニータの産後ケア教室を受講した卒業生でもありました(!)。
その栗林さん(まゆみん)と、放課後NPOアフタースクールの産休・育休取得者に『産後白書4』の送付を希望・決定された放課後NPOアフタースクールの人事・労務担当の池田亜希子さんと村﨑理恵さんに、送付決定の目的や背景、またそれぞれのお仕事や子育てしながらはたらくことについてのおもい、課題感などについてお話を伺いました。
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクールは、「放課後はゴールデンタイム」をビジョンに、安全で豊かな放課後を日本全国で実現するため、学校施設を活用した放課後の居場所「アフタースクール」を運営。また、企業や自治体と連携して、全国の放課後の居場所における環境整備や人材育成の支援、体験機会創出に取り組んでいます。
【公式サイト】 http://www.npoafterschool.org/
【facebook】 http://www.facebook.com/npoafterschool
🔼上段左からマドレボニータ理事の永野間、山本(ひろりん)、中断左が放課後NPOアフタースクール 事務局の池田亜希子さん、村﨑理恵さん、そして下段が栗林真由美さん(まゆみん)です。
マドレボニータ山本:今日はお忙しい中、インタビューをお受けくださりありがとうございます。早速ですが、池田さんと村﨑さん、今回『産後白書4』を団体内の産休・育休取得者のみなさんに送付したいとおもわれた経緯をお聞きしてもよいでしょうか?
放課後NPO 池田さん:栗林から渡された『産後白書4』を読んで、まず「この冊子に14年前の孤独な産後に出会えていたら、もっと楽しい育児ができたかも知れないし、何とも言えないモヤモヤから救われたかも知れない。当時の私はどんなに楽になれただろう…!」とおもい、心に響きました。
同時に、現在携わる人事関係の業務の中で、産休・育休取得者や復職する人たちの対応もしているので、まずは『産後白書4』を読んで欲しい!と思い、マドレさんに少し分けていただけないか?とお願いしました。
放課後NPO 村﨑さん:私は放課後NPOアフタースクールに入職して9年目で、私生活では2歳の娘がいます。絶賛仕事しながらの育児中です。
元々、現場ではたらくことが好きでした。でも育児などプライベートの変化が仕事に影響する難しさを経験して、現在は事務局に異動して労務管理業務に従事しています。
業務では日々、環境やライフステージの変化などの同じような悩みを持つ人たちが、団体の中でどう活躍していきたいか?どうすれば仕事も育児も楽しめるか?ということに関するコミュニケーションをとりながら、労務として一体どんなサポートができるか?を考えています。
その一環で、産休・育休中のスタッフを対象にした「サンキューカフェ」という場を毎月定例開催しています。人によって抱える悩みや、日々の育児でぶつかる壁も、そのステージやタイミングにより全く違います。共有できそうでできない…とか、課題感が人により違う…、または答えがないなど、そんな仕事よりも難しいことに向き合っている人たちのために、一体何ができるか?を日々模索中です。
今日は『産後白書4』を、そんな産休・育休中のスタッフへのサポートにどのように活かしていけるか?のヒントも得たいと思っています。
マドレボニータ山本:池田さん、村﨑さん、ありがとうございます。
では今度は、『産後白書4』を所属先の放課後NPOアフタースクールに紹介くださったまゆみん(栗林さん)へ質問です!
まゆみんは、ご自身の産後の11年前にマドレボニータの産後ケア教室に参加くださったそうですが、当時はどんな印象や感想をもちましたか?
放課後NPO 栗林さん(まゆみん):当時、産後は骨盤が広がるから運動した方がいい…と聞いて調べる中で、産後ケア教室を見つけました。
教室の赤ちゃんの同伴規定(※生後210日以内)があったことと、家にこもりがちな産後に、赤ちゃんと出かける理由も欲しかったので教室に申し込みました。
当時ははじめての子育てで、赤ちゃんと電車に乗るのにも気を遣っていました。
でも、マドレの産後ケア教室は、「赤ちゃんが泣いても大丈夫、泣いたら抱っこして一緒にやったらいいよ」と楽しい雰囲気!おかげで、自分の中で子育ての“こうしなければいけない”という気持ちが少し緩んで、泣いても大丈夫だと思えました。また、参加したママ同士で赤ちゃん連れで一緒にランチする経験も息抜きになり、当時はとても助かりました。
もう一つ、産後ケア教室で取り組む内省的な、自分自身を振り返るワークの時間(参加者同士の対話)が印象的でした。当時はビジネス領域ではたらいていたこともあり、気持ちを扱ったり、自分がどうありたいか?を問われることもありませんでした。でもマドレの産後ケア教室のワークで、「自分はどうありたいか?」を問われて、「私、仕事が好きだな!」と気づくことができたんです。それは子育てに忙殺される日々の中で、とても貴重な体験でした。
マドレボニータ山本:そうだったんですね。産後ケア教室の受講が赤ちゃん連れで外出するきっかけや練習になったり、あらためて自分を見つめ直して、自分にとって大切なものに気づくチャンスになったんですね。
そんなまゆみんは、今回なぜ自団体の人事担当の方に『産後白書4』を紹介してくださったのですか?
放課後NPO 栗林さん(まゆみん):まず私自身が以前、人事労務を担当して、その業務内容を把握している前提がありました。さらに現在の人事労務担当者が産休・育休取得者向けに、「仕事から離れている時期でも、集まったりつながっていられるように」とサンキューカフェを定期開催するなど、スムーズな復職をサポートをしようと努力していることも理解しています。いい組織だなぁと。
また子育てのステージによる時短勤務など、働き方にさまざまな選択肢がさらに増えていくことを大事にするには、そのような組織によるサポートや、パートナーとの相互理解なども必要だと、私自身も感じています。
人事労務のそんなおもいや試行錯誤がわかっていたので、『産後白書4』をいただいた瞬間に、すぐに人事のみんなの顔が浮かんで、「池田さん、きっとこの冊子が好きだと思う。よかったら…」と手渡しました。
マドレボニータ山本:池田さんや村﨑さんの日頃の業務や姿勢から、『産後白書4』から産後に関する情報提供の大切さを理解して、何らかの形で活用してくれるんじゃないかな?という期待をもったんですね。
では、人事労務担当の池田さんは『産後白書4』を受け取ったとき、どんな印象をもたれましたか?
放課後NPO 池田さん:これまでの業務で、産休・育休中の事務手続き申請(育休延長など)のアナウンスをしても、なかなか手続きがなされないことがありました。大切な手続きだから、人事担当としてはぜひして欲しい。けれど、一方的に案内を送るだけではその必要性がなかなか伝わらず、手続きの行動には結びつきません。
ならば、産休・育休取得者が集まる機会をつくってはどうかな?と思いました。
以前、職場でおこなっていたfika(フィーカ・毎週決まった曜日にお茶を飲んだりおやつを食べて和もうという時間)の雰囲気で、その名も「サンキューカフェ(産休・Thank youの意味も込めて)」。
産休・育休取得者が職場復帰する前に、職場に安心して赤ちゃんを連れて来られるように、フカフカのマットやクッションも用意したり、オンライン参加もOK!とウェルカムな雰囲気を作るなどして、赤ちゃんを抱っこしたり、生まれてきてくれてありがとう!というやさしい気持ちを表しながら、人事担当として「保育園や育休延長申請の手続きを忘れずにして欲しい」とお願いする…というのがサンキューカフェのはじまりでした。
現在のサンキューカフェは、産休・育休中に限らず、産前、産後、復帰後のさまざまなステージのメンバーたちがそれぞれざっくばらんに話したり、情報交換できる雰囲気になっています。
でも、どこまで本心から楽しんでくれているのか?他にも何か職場としてできることはないだろうか?産休・育休中は自分の時間を持ちたい…という人もいるけれど、実はモヤモヤしている…という人もいる。だからサンキューカフェ開催以外にも何か方法はないかな?といつも頭の片隅にあったときに、ちょうど『産後白書4』を紹介されたんです。
もちろん、復職はして欲しいんです。でもその前の段階で、この『産後白書4』が自宅に送付されて読んでみたら、産休・育休取得者はいろいろ感じたり考えたりすると思うんです。この情報提供があるのとないのでは、全然違うとおもいます。だからいま産育休中の人に早く配りたい、読んで欲しい!そして何か感じてもらえたら…と思いました。
マドレボニータ山本:池田さんに人事担当としてできるサポートが他にないか?という課題意識があったんですね。産休・育休取得者への『産後白書4』送付からまだ間もないですが、村﨑さん、社員の方から何か反応はありましたか?
放課後NPO 村﨑さん:直接の反応は、まだ確認できていませんが、配布してから一度サンキューカフェがあり、労務チームの反応は良いです(笑)。
マドレボニータ山本:私が活動する岐阜市内では、「マナビバ」という産後女性たちが語る場を作っていて、そこでは『産後白書4』などを読んで語る読書会を開催しています。そんな風に同じものを読んで、自分のはたらき方やパートナーシップについて人と語り合うこともオススメです。社内でスタッフがお互いの価値観をすり合わせる機会にもなりますよね。
それでは最後に『産後白書4』の配布や普及によって、どんな未来をつくっていきたいか?をお聞かせください。
放課後NPO 栗林さん(まゆみん):池田さんのお話から、はじめての子育ては孤独になりがちだからこそ、居場所やつながりが必要だとあらためて感じました。そして「孤育てにならないように」というのは、産後も学童期も共通しているとおもいます。
放課後NPOアフタースクールの代表がよく示す調査結果に、「居場所の数が多いほど、ウェルビーイングが高まる」というものがあります。だからこそ、子育てのどの時期でもそういう居場所やつながり、サポートを誰もが得られるように…と思います。
放課後NPO 村﨑さん:出産前も、子育て中の人たちと一緒にはたらいていたけれど、妊娠期のつわりや出産、子育てのことなど、こんなに大変だなんて誰も教えてくれなかったし、自分が産むまではわからなかった…ということが、ものすごく多かったんです。
産前も教育分野ではたらいていましたが、さまざまな家庭のお子さんを見ていて、「ウチの人はそういうけれど、この子にはこんなよいところがある」など、第三者的な客観的な立場でしか捉えられていませんでした。
でも、実際に自分が親になり当事者になると、保護者のかたが抱えている本当の悩みもダイレクトに「きっとこんな感覚なんだな…」とわかるようになったんです。
だから第三者的な良さを活かした関わりと、実際に保護者として感じる課題感への理解と、その両方をうまく組み合わせて、放課後NPOアフタースクールの関わりにも活かしたいと思っています。
また、(妊娠・出産・産後・子育てに関して)「知らなかった」という、その時期に差し掛からないとわからない人をサポートしたいと思いつつ、そのサポートにより増える労務の負担とのバランス感覚は重要な点だとおもっています。
産休・育休取得者だけを特別扱いする訳ではなく、サポートする側になる当事者以外のメンバーも報われるように、どんな制度を作っていかなければいけないのか?や、女性が多い団体なので、子どもの有無ではなく、さまざまな立場のメンバー同士がどんなサポートをし合えるか?他にも何かいい仕組みがつくれないか?というのは、労務としてつねに悩んでいる課題です。
多様性への理解が誰かへの皺寄せになってはいけないし、そこをどう理解し合いながら、みんながハッピーになるってなんだろう?ということを、いつも考えています。
マドレボニータ山本:さまざまな企業や団体とのやりとりの中でも、同様の課題感はよくお聞きします。だからこそ、自分たちも「自分ができないところをどうサポートしてもらうか」など、内部はもちろん、外部の頼り先にも出会ってつながっていくことが必要なんだと思います。
そんな中で、私たちマドレボニータも、他団体や社会全体の中でどんな風にお役に立てるか?と試行錯誤し行動し続けていきたいと思います。そんなマドレボニータと放課後NPOアフタースクールさんで、今後も引き続き意見交換しながら、お互いの活動を応援し高め合っていけたらうれしいです。本日はありがとうございました。
コメント